録音は基本的にガットギター、ベース、ドラムが共に録音し、後から他の楽器を被せるという方法で録音しました。録音時期は昨年の8月。リリースまでが長かったですね。
録音は馬場友美女史、マスタリングはピースミュージックの中村宗一郎さん。
たくさんの人の協力で出来た一枚です。
一曲ずつ、僕の言葉で解説したいと思います。
1.おかえり
このアルバムのタイトルにもなった曲。年末のビールのCMに使われたい。
もともとはドローンとしたイントロでしたが、アルバムの1曲目に入れる構想はあって、再生した瞬間に引き込まれるようなものを作りたかったのです。(名曲感)
イントロのサックスは、レコーディングの際にを考えてもらいました。
間奏はギターvsサックスのバトルMIXをお願いして、大サビに向けて消化して盛り上がっていく行く納得の仕上がりになりました。
アウトローには同じレーベルからCDを出している、偶然の産物こと三浦君がコーラスを入れてくれました。
たまにこの曲の歌詞について聞かれるのですが。
何年前だったか定かでないけれど、ある夏に自らの命を絶った小学生からの友人に書いた曲です。(行方不明になった時に、彼の母親が僕のブログに書き込みをしていて、本人の冗談だと思ってしまったことを後悔したりもしました。)
彼は僕がバンドをやっている頃から、暇さえあればライブを見に来てくれる人でした。突然、今から京都に行こう!って連絡してくる人でした。
お通夜も告別式にも出席して、後日届いた手紙に「好きな音楽をやっている阿久津君は、◯◯の憧れでした。」と書かれていて、何ともいえない気持ちになってしまい。
だから普段は、誰かの為に歌を作るという事はしないのですが、この気持ちは自分が出来る事で形に残しておきたいと思って作った曲です。
2.端と端
この曲はi need me.として始めた2008年からある曲で、いろいろと形を変えて演奏し続けています。当初はとてもゆっくりな曲でした。
繰り返し歌っている、
'伝えたいのは言葉の端を繋いでいる優しさかい 歌ってるのはあなたの嘘に踊っている僕の事'
はたちの頃に書いたこの歌詞。
たとえ表現方法は違っていても、核(芯)となる部分が同じならばその端っこと端っこで繋がる事が出来ると思うのです。それは今でも変わらない考え。
なんでもかんでも"こういう風"とか"シーン"みたいなものでくくっちゃ駄目だと思うんです。それは自らの選択肢を狭めるだけ。
自分の言葉で、自分の意見を持って選択をする人がもっと増えれば良いのに。
今回のバンド編成で、このようなアレンジが出来た事はいとつの成果な気がします。
弾き語りをメインにバンドが乗っかるという、良くあるスタイルではなくて、むしろ僕がギターを持たなくても良いくらいの アレンジ。こういう風な曲をもっと増やしていけたらなと思います。
この曲にはthattaのモリシが参加していて、バンジョーがいい味を出しています。
3.スーパーニュース
レコーディングの際に、とりあえず録っておいて使うなら使おうと録音した曲です。
タイトルは次の曲の「18時半のくだらないニュース」に掛けています。なので、次との曲間は殆ど取りませんでした。
もっと穏やかな時勢だったら、穏やかなニュースであった事でしょうに。
4,マルスのウイスキーをペプシのコーラで割って
テーマは「何も出来なかった休みの日の18時過ぎの憂鬱」。
ある時期、色々なものに追われていて、休みも起きたら夕方。みたいな生活が続いていた時期に書いた曲です。
マルスのウイスキーとは、本坊酒造という酒造メーカーが出している、一升瓶のマルスエクストラというウイスキーです。これを近所の個人酒店で見つけて愛飲しています。
夕方過ぎに起きて、もやもやした気持ちを解消する為にとりあえず外に出る。近所の下高井戸シネマでレイトショーをみて、西友で1.5リットル138円のペプシコーラを買って、家でマルスを割って飲む。バーガーキングは24時間営業を辞めてしまったけれど。
その時に家で飲みながら聴いていた、金延幸子や浅川マキ、美空ひばりや森田童子、加藤登紀子。夜の静けさとも相まって、すごく身体に染み渡ったのです。
サビ前のkooreruongaku北島氏のチョーキングギター。からの一気に下がるサビ。
ダサさを一周したかっこよさみたいのを見出したくて、この"キメ"は譲れなかったのです。
スタジオに入った時に、僕がいきなり歌い始めてどんどんバンドが層を埋めて行きました。その時の録音をサウンドクラウドにアップしています。
この時点で、殆どが仕上がっていますが、音源はもっと曲のけだるさを表現した仕上がりになっています。
この曲にもthattaのモリシが参加していて、スライドギターがトローンとした雰囲気を盛り上げてくれています。
イントロのリバーブ掛かりすぎなドラムのフィルは、一曲目のフィルと被ってしまうと思い、スタジアムなリバーブをお願いしました。最初はわけわからないけど、何回も聴いて行くとクセになってきます。
途中、バンドが消える部分は、野村さんの判断。これをライブでやってみると、すごく気持ち良かったです。
5,住む街
初めてひとりで暮らし始めたのが今の街で、この街が人々が自分を成長させてくれたという感謝を勝手に感じています。
自分が住んでいる街を、そこに暮らす人々を、家を、もっともっと愛する事が、「暮らし」というものを豊かにする方法のひとつなのではないのかなぁ。と考えるようになりました。
思い出したくない事もあるけれど、くだらないこともかき混ぜた色が、自分の色になるのです。
これを綺麗ごとだと言う人もいるかもしれないし、若さだと一蹴する人もいるかもしれないけれど、等身大でしかいられないし、等身大でありたいのです。
この曲にはpenoの水谷君が木琴とクラリネットで参加してくれています。
僕がギターノイズをやっていた昔から、今でも見てくれている数少ない友人のひとり。
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安住の地をうかつに期待して
仮の生活だからとうそぶいて
またこの街で何度も消えてはやり直し
結局帰る場所はよそにはなくて
今ここにいる自分自身にこそ言って欲しかった
「おかえり」
山口洋佑 (画家/デザイナー/イラストレーター)
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この山口さんのコメントを読んだ時に、自分が無意識に考えていたことが、全部繋がった感覚に陥りました。
i need me.阿久津和也